ディラン好きの日記

転がる石のように

社員旅行に行ってきました。(後編)

<前回までのあらすじ>

社員旅行に行ってきました。(前編) - ディラン好きの日記

 

ティンティンチラララチラチラ♪

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着信は管理者からだった。

先ほどまでのお祭りモードから一転

その場は、音が出る方の屁を満員電車でこいてしまった時のような空気が流れた。

社長「出るな...!」

F氏「し、しかし社長...!」

社長これは業務命令だ。ここで出てしまっては、私たちの作戦はパーになってしまう」

 F氏「わ、わかりました。」

着信音が止み、再び店の主人との会話を再開した後も、F氏はそわそわして落ち着かない様子だった。

しばらくして、呼んでおいたタクシーが到着した。

店を出てタクシーに乗り込む私たち。決戦は金曜日。

 

しかし、F氏がいつまで経ってもタクシーに乗ろうとしない。

見ると、眉をひそめてこちらを見ている。

その顔は、BEGINのボーカルにめちゃめちゃ似ていた。

F氏「社長、やっぱり俺、やめときます」

D「どうしたんですか!早く乗ってください!」

F氏「いやダメだ、俺一応幹事だし...」

社長「そうか...」

社長の表情は揺るがない。そしてまっすぐF氏を見つめてこう言った。

社長「しかたがない...Fには悪いが、ここは犠牲になってもらおう。あいつら(ババア)もアイスと酒が手に入れば落ち着くだろう。純粋に心配してるのかもしれないしな。」

D「そ、そんな...!そんなの僕、嫌です!3人で行くって約束したじゃないですか!」

社長「うるさい!!組織というものは常に、誰かの犠牲の上に成り立っているのだよ」

社長のこんなにも真剣な顔を、職場では見たことがなかった。

 

F氏「そうだぞD、ここは俺が上手くやっとくから、社長と先を急げ。」

F氏の優しい言葉が胸に刺さる。

社長「一息つきながら〜人は人を想う〜」

F氏「一息つきながら〜人は生きてる〜」

社長「一人だけど〜」

F氏「一人じゃない〜」

社長「心の中は〜」

社長・F氏「一人じゃない〜」

私は感極まっていた。それを証拠に、

社長が最近気に入っているらしいCMソングを、変なタイミングで歌われても全く気にならなかった。もはや私たちは、職場の上司と部下という垣根を超えた”同志”だった。

 

こうして私と社長はタクシーへ乗り込み、熱海イチだという繁華街へ。F氏はアイスとお酒を買って、旅館に戻ることとなった。

 道中の車内で社長は言った。

社長「予想通りだな」

D「なにがです?」

社長「この展開だよ。今俺たちは、プランBで動いてる。」

D「プランB?」

社長「いいか、計画を立てる際には主戦略としてのプランAとともに、防衛線としてプランBを張っておく。これはビジネスの世界では常識だから覚えておくといい」

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 社長の急な社長ヅラに私は少々戸惑ったが、そうこうしているうちにタクシーはある店の前に止まった。

ピンク色の店の前には、スーツ姿で頭にポマードを塗りたくったおじさんが立っていた。

社長は貼ってある料金を見て言った。

社長「おいおい、高いよ...」

確かにそれは、高いように思えた。

D「社長、ちょっと様子みますか?」

一旦店を離れ、辺り散策することにしたのだが、驚いたことに人に出会わない。そもそも店が開いておらず、営業しているのはコンビニかパチンコ店くらいだった。

 恐るべし、熱海の繁華街。さすがの社長もこれは想定外だったようだ。

仕方なく、さっきのポマードおじさんがいる店に戻る。

値段に関して、社長は「交渉できる」と言った。

「ひとまず様子を見てくる」と店内に導かれる社長。

 5分くらい経っただろうか。社長が降りてきた。

そしてあの暴言を吐いたのである。

社長「ババアだった。アタミ死ね」

 

どうやら、店の前には出勤中の女性のパネル写真が飾ってあったらしく、それらはどれも、”元”海女さんのようなたくましい方々だったそうだ。

交渉の方も、社長の渋る演技に対してポマードおじさんは「嫌なら他へ。ただし、他に店があれば、の話ですけどね」と言ってうすら笑いを浮かべたそうだ。その話のリアリティに社長は逃げ出してきたのだという。

こうして熱海に絶望した私たちは、帰路に着いた。

社長は帰りのタクシー代をケチるほどに気が小さくなっていた。

 暗闇の海岸沿いを歩きながら、私たちはF氏のその後が気になっていた。

先ほどから彼には連絡を入れているのだが、一向に既読がつかない。

「もしかしたらもう海に沈められているのかも..」

社長が怖いことを言った。そしておもむろにケータイを取り出し、貫一・お宮像をパシャりと撮った。

「何してんですか?」私が尋ねると

「アリバイだよ。俺たちは怪しい場所へなんて行っていない。明日のために、観光スポットの下見をして来たんだ。」社長は言った。そして、「あと2千円安ければなぁー」と恨めしそうに空を仰いだ。

社長は頼りになる男だった。この職場も、向こう5年は安泰だろう。

 

長い階段を登り、ヘトヘトになってホテルへ到着。

部屋の扉をそっと開け、さもずっとその場に居たかのような空気感を出して入っていく。「あーーーー!!!」一斉に注目を浴びる。至る所からヤジが飛ぶがよく聞こえない。皆、泥酔しているようだ。

隅っこの方で、小さくなっているF氏を発見した。

 

泥酔した管理者が社長に詰め寄る。

管理者「社長!あなた社長ですよね!?」

社長「はい!僕は社長です!」

管理者「一体どこで何をしてたんですか!?」

社長「明日のために、観光地を視察しておりました!」

「うそつけー」ヤジが飛ぶ。

管理者「証拠は!?」

社長「いやだなーもう〜疑ってるんですか?」

社長がおもむろに取り出したケータイの貫一・お宮像は、真っ暗で何が何だかわからなかった。彼は撮影の際、フラッシュを忘れていたのだ。

社長「あれ?おかしいなー、、でもほら、このフォルム!どこから見ても貫一お宮でしょう!なぁ!?」

私は大きく頷いた。助けを求めようとF氏を見ると、彼は私たちと目を合わせようとしなかった。空一点を見つめ、タバコをふかしている。

(あのヤロウ、裏切りやがったな...)

社長と私は管理者に頭を下げながら、目を合わせてそう悟った。

 

その後の私たちへの始末は酷いものだった。

カラオケでは、社長が歌うと必ず盛り下がった。

対照的に皆とカラオケを楽しむF氏。

幸い、泥酔した管理者が『真夏の夜の夢』を踊りながら歌ったことで、会場は爆笑の渦に包まれ、皆で踊りながら一体となることができた。

D「社長!今がチャンスですよ、挽回しましょう!」

社長「よし!俺が行く!選曲してくれ」

 

私が入れた『長崎は今日も雨だった』は明らかに選曲ミスだった。

皆の顔から笑顔が引いてゆく。

完璧に歌い上げた社長は、私にこう言った。

社長「僕ね、こーゆう恨みに関しては、ねちっこいよ?」

 

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こうして最後まで報われることはないまま、第1回目となる社員旅行は幕を閉じた。

社員旅行以降、男たちには不運が続いている。

私は足の小趾を骨折し、社長は原因不明の熱にうなされる等、まるで良いことがない。

熱海で一夜の夢を見ようとした天罰が下ったのかもしれない。

私達は誠心誠意、心を改めなければならないと思っている。

その試みとして次は男性陣のみで、

ススキノあたりへの回心ツアーを目下検討中である。

 

 

ブログを始めて一年経ちましたが・・・

 

他人ニ読マレズ

家族ニ読マレ

はてなスターと

ブクマの無さニモ負ケヌ

丈夫な精神力ヲ持チ

恥をカキ

決してバズらず

いつも静かニ更新シテイル

 

一ヶ月に3,4回の更新と

ユーモアと少しの愚痴を吐き

あらゆることを

ディランを文章に入レズニ

くだらぬ雑記ブログと化した

そして忘れられた

 

都心の外れの住宅街の2階の

小さなプレハブ小屋に居テ

 

ヒガシに病気のリヨウシャあれば

行って看病してやり

職場に疲れたババア居れば

行ってその肩を揉まサレ

管理者に呼ばれた同僚に会エバ

怖がらなくてもよいと言い

フロアにケンカや怒号が交えば、

ワレ関セヌ顔をした

 

日照りの時は汗を流し

寒さの冬は夜明けに目覚め

みんなにノッペラボウと呼ばれ

褒められたい

傷つきたくない

そういうものに

私はなってしまった。

 

 

それが、一年間続けた

このブログの敗因である。

 

 

 

社員旅行に行ってきました。(前編)

 

「ババアだった。アタミ死ね」

普段温厚な社長がファッションヘルス店から出てきてこのような暴言を発したのは、先日の社員旅行でのことだった。

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「社員旅行をしましょう」

朝礼で管理者が発したこの言葉。一度は聞こえないふりをしていたが、ついに現実のものとなってしまった。

冷え切った職場の雰囲気をKAIZENするのが狙い、とのこと。まじKANBENである。

というのも、企業に勤めている皆さまにとって社員旅行といえば、他部門のピチピチギャルとの交流のチャンスであるかもしれない。だが、私にとって弊社の旅行は親世代の方々と行く孝行ツアーに他ならないのだ。

 

後日、出欠アンケートが回ってきた。

リハビリテーション部の諸先輩方は総じて欠席にマルをつけている。管理者は旅行の提案の後、念を押してこう言っていた。

「出欠にあたっては、少なくとも各部署から一名以上は参加するように。」

最後に私にアンケートを回すとは悪意しか感じない。恨んでやる。

 

こうして総勢10名の社員旅行が熱海にて開催された。最年少、20代は私ひとり。男は私以外に社長と福祉用具のF氏のみ。それ以外は全員アラフィフのギャル達だった。

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10年ぶりの熱海は当時に比べ、随分と活気を取り戻していた。

着くや否や、社長は当時のバブル入社組の熱海旅行はすごかったことを私に力説してくれた。F氏も「あの時は何でもありでしたね〜」と懐かしそうに目を細める。彼らは元々、別の業界にいて、ひと通り華やかな時代を経験済みなのだ。

私の知らない刺激的な時代の話に花を咲かせていると、前の方で女性陣が騒いでいる。

どうやら昼飯をどこで食べるかで論争が勃発しているようだ。これは私の偏見かもしれないが、専門職のババアが集まると物事が首尾よく決まらない。そのくせ団体行動は取りたがるから大変だ。結局社長が店を決めることになり、入った店が激マズで全員から大ブーイング。一件落着というパターンでこの職場は成り立っている。

 

ホテルに到着すると、ロビーは観光客でごった返していた。

チェックイン云々に手こずるF氏に、アラフィフのギャル達はブーイングを浴びせる。

この業界では男の立場は非常に弱い。F氏は強制的に幹事に仕立てられた挙句、プラン決めに際しては仕事でもないのに管理者に呼び出され、ダメ出しを受けていた。

社長にしても同じだ。社長は「社長」というポジションにいるけれど、物事の決定権はいつも管理者にある。都合の悪いときだけ、その権利は社長に移譲されるのだ。

 

チェックイン後、ホテルの一室に男達は集まり、それぞれやってらんねーという話をした。

社長「熱海にまで来て、この仕打ち。俺が何をした?」

F氏「いや社長、あれはさすがに不味すぎましたよ...。それより俺ですよ!なにが悲しくて、ババア達にこき使われなきゃいけないんですか」

D「今のところ、なんにも楽しくないですよ」

 

そして仲間達は今夜、外出の計画を立てる。

とにかくもう、ババアのいる旅館には帰りたくない。

 

夜、旅館にて食事を終えて、部屋に戻り、飲み会が始まった。

食事の時からお酒が入っていたこともあり、皆一様に酔っていた。私たちは外に出る機会を今か今かと伺っている。

しばらくして、女性陣から買い出しを依頼された。

それは「アイス買ってきて〜♡」という依頼だった。ババアのアイスほど胸糞悪いものはない。

だがこの時ばかりは、待ってました!!とプランAを発動。

男達はそそくさと身支度を整え、部屋を出る。去り際に「早くね。」と念を押されたが後ろは振り返らなかった。

 

地獄から解き放たれた3人。

これからが本当の社員旅行!あの素晴らしい夜をもう一度!はしゃぐ男たち。

しかし熱海の夜は想像以上に冷たかった。

駅前の商店街はどこもシャッターが下りていて、人の気配がない。

D「社長、これ大丈夫ですか?(汗)」

社長「大丈夫、熱海でこれは想定内だ。」

しばらく歩いていると、ようやく明かりが点いた居酒屋を発見した。

F氏「とりあえずここ入りますか」

D「え?繁華街は?」

F氏「バーロー、まずは地元の人間から情報収集すんのが定石だろうが」

さすがF氏、バブルを生きただけはある。

 

中に入ると、

広くない店内に60歳くらいのお父さんが一人、厨房に立っていた。

客はふたりしかおらず、地元の人らしいおじいさんと、活気のあるおばあさんがカウンターに一つ席を挟んで座っている。

おじいさんはこのおばあさんに恋をしているのだろうな、と私は思った。或いは、昔に何かあったのかもしれない。おばあさんの方へ半身を向けながら上機嫌に酒を酌む。

私たちは地元民の温かい雰囲気に囲まれて、しばし談笑した。これこそが旅行の醍醐味だ、と私は思った。

 

しばらくしてF氏が熱海のナイトスポットについて彼らに尋ねると、皆口を揃えてある場所を口にした。「熱海と言えば〇〇」「〇〇が一番賑わっている」

数十年前に比べて活気はなくなったものの、熱海の繁華街と言ったらそこしかないらしい。

社長「平成生まれの君にバブルの夢を見させてやるよ」

D「よっ社長!」

F氏「大統領!」

 

昭和チックなノリで盛り上がっていたその時、F氏の携帯に着信が入った。

 

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F氏の顔が、凍りつく 。「どうした?」と画面を覗き込む。

管理者からの着信だった。

(つづく)

 

 

クレイジー看護師が職場を去った。

 

星の王子さま―オリジナル版

“一番大切なことは、目に見えないんだよ。”

こう言っていたのはどこの誰だったか。

私はその真意をサン=テグジュベリからではなく、辞めていったクレイジー看護師から学んだ。

 

度重なるインシデントと報告書等の事務作業放棄。

看護部の人間関係を戦時状態にまで陥らせたクレイジー看護師だったが、法的事情により、会社側は解雇を言い渡すことができないでいた。

どうしようもない事情の中で事務所には日々怒号が飛び交い、張り詰めた空気が蔓延していた。 その様子を知りたい人はこちらを参照してほしい。

管理者を陰口ババア呼ばわりしたことを反省したい - ディラン好きの日記

 

そんなある日、冷戦状態の我が事務所に朗報が届いた。

なんと、クレイジー看護師が退職届を提出したのだ。

管理者(通称:クソBBA) の執拗な陰口にも、年下の看護師に怒鳴られても、全く動じていなかったクレイジー看護師が、突然退職希望を自ら出したのだ。

そのニュースに看護部は歓喜し、冷戦の終わりに私たちも安堵した。

それを受けて先日、クレイジー看護師の身辺整理と新たなスタッフを迎えるにあたって、看護部では席替えが行われた。

 

すると翌日の昼休みに異変が起こったのである。

いつもクレイジー看護師に叱責を浴びせていた10年以上年下の看護師。その隣の席に座った別の看護師の様子がおかしい。食事中に気分を悪くしてしまったのである。

あとあと理由を聞いてみると、どうやら原因は隣の看護師の足のスメルだった。

どうやらそのスメルには当の本人も自覚があるらしく、むしろ積極的に臭いを嗅がせに来るのだという。へその臭いを人に嗅がせる渡辺直美さんのような、明るいタイプの人間なのだ。

そしてクレイジー看護師が退職する5日前、事件は起きた。

その日は雨が降っていて、皆長靴を履いて訪問に出るのだが、なんと足スメル看護師がクレイジー看護師の長靴を間違って履いて行ってしまったのだ。

これに初めて感情をむき出し、激怒したクレイジー看護師。

今までどんなに陰口を言われても、罵られても、感情を表に出さなかった彼女がはじめてキレた。

思えば彼女は、入職してからずっと足スメル看護師の隣の席にいた。

最初は真面目に仕事をこなしていた彼女がある日突然クレイジーになったのは、隣のスメルの影響かもしれない。トンデモなスメルを毎日嗅がされた挙句、怒鳴られる日々はどんなに辛かったか想像に絶する。その足で人の家に上がりこむ方がよっぽどインシデントだろう、と彼女は思っていたに違いない。

今思えば、彼女が仕事を放棄したのはスメルに対するせめてもの報復だったのだ。

「ファブリーズしたからいいじゃないですか!!」

「そーゆう問題じゃない!!!」

最後にそう叫んだクレイジー看護師の言葉は間違いなく正論だった。

 

 

勤務最終日、彼女の目には涙が滲んでいた。嬉し涙だろう。

退職を喜んでいたのは私たちではなく、むしろ彼女の方だったのかもしれない。

形式的な花束を贈与され、まばらな拍手の中去っていくクレイジー看護師の背中を見送りながら、「あなたは正しかった」と私は心の中で呼びかけた。

 

彼女が去り、数日。職場には平穏な空気が流れている。

しかし、この平穏はいつまで続くかわからない。

スメルの隣に新たに座る看護師からは既に、「私、ダメかも」という声が漏れている。

花粉症の時期が過ぎ、鼻腔がクリアになった季節に、彼女がスメルにやられてクレイジーにならないことを祈る。

大切なことは、目には見えない。

物事の本当の元凶というのは、目に見えるものでなく、”鼻”で感じるものなのだ...

 

【3/23イベント】紗倉まなさんの誕生日をお祝いしてきた

 

 16時。

アメリカ留学から帰ってきた親友と新宿の老舗喫茶店「らんぶる」で『紗倉まな 生誕祭』までの時間をつぶす。

兼ねてからスカイプで連絡を取り合い、温めてきた彼とのラジオ配信だが、最終的な方向性で折り合いがつかず白紙へ戻った。私は伊集院光の、深夜の馬鹿力的なものをイメージしていたが、彼は大沢悠里のゆうゆうワイドっぽいものをイメージしていたらしい。ビジョンって難しい。

最悪のテンションで新宿ロフトプラスワンへ向かう。

 

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歌舞伎町のど真ん中にそれはあった。

 

 

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漂うアンダーグラウンド感。

 

 

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私が知っているLOFTとはどうやら関係がないようだった。会場は思っていたよりも小さく、なんとなく昭和の匂いを感じる。

 

 

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開始30分前に入ったが、すでに席は参加者で埋め尽くされていた。

壁には今まで出演した数々の著名人のポラロイドが飾られていて、この会場の歴史の深さを感じさせる。

親友とふたりで端っこの方の席に座った。私の目の前には一人で来ている若い女の人がいた。会場を見渡してみると、大半は30〜40代の男性が多い中、ぽつぽつと若い女性が紛れているのが印象的だった。

 

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開演までの間、ワンドリンクオーダー制のためお酒を頼む。法外な値段かと思いきや、普通の居酒屋と変わらない値段で良心的だった。

 

しばらくしてアンケート用紙が回ってきた。

どうやらこの中から紗倉まなさんが気になったものを選び、相談に答えてくれるらしい。私は30分くらい吟味して、アンケートを記入した。

 

一人で参加している目の前の女の子に声をかけてみると、彼女は紗倉まなさんの追っかけをしているらしく、今回でイベントに参加するのは4回目だという。追っかけている理由は、「単純に、かわいいから」らしい。

AV女優のイベントに若い女子が応援に来ているのを、私は意外に思った。

そもそも私が紗倉まなさんの生誕祭に参加しようと思ったのも、友人の誘いに加え、既存のAV女優と違うものを感じ、その特異性はどこから来るのかを探ってみたいと思ったからだ。

 

今や「紗倉まな」という女優を知らない男子はいないだろう。

トップ女優として本業をこなす傍ら、ドラマや映画への出演も多い。

キュートなルックスに加え、高専出身という経歴を活かし、トヨタのウェブサイトでコラムを執筆、工場見学番組への出演など、工学系リケジョとしてのキャリアを活かした仕事も行っている。

さらに多数のコラムを執筆するだけでなく、エッセイを出版し大ヒットを記録、2作目となる単行本で小説デビューを果たし、作家としても今大注目を浴びている。

最低。

最低。

 

 アイドル、女優、文筆家、工学系女子。

いまだかつて、こんな多様な顔を持つAV女優がいただろうか。

 追っかけをしている彼女も、紗倉まなさんをアイドルとして応援しているようだった。

 

近年、AV女優という職業がオープンになってきているように感じる。

『AV女優の社会学青土社)』を筆頭に、「AV女優」が学問的なスポットライトを浴びる傾向がある。宮台真司氏など以前から、女性の性・風俗的な行動を考察する社会学者はいたが、私の感覚では最近になって書店の一般書コーナーに「風俗嬢」とか「AV女優」の文字が目立つように感じる。昔なら書店の隅に隠れるように置いてあったもの、クローズドだった業界の話が、いまは社会学や経済学と結びつけられて、オープンに語られるようになった。

それに加え、影響力を持つ多くの女性ライターがウェブ上で、性についてあけすけに語る事で、フェミニズム的な権利の一つとして、性が表現されるようになった。女性用AVの出現も、このムーブメントの一環ではないだろうか。紗倉まなさんのような新しいタイプのAV女優の出現は、このような時代の変化も寄与しているのかもしれない。

 

 

 そうこうしているうちに生誕祭は始まった。

すでに八海山を3杯引っかけてきたという紗倉まなさんは、司会者のテンションの低さと対照的に、ハイテンションでハツラツとした女性だった。私がイメージしていたよりもブリブリした感じはなく、aikoのような元気ガールだった。

 

しばらくして、最初のゲストが呼ばれた。

現れたのは、闇金ウシジマくん2で共演したという俳優のやべきょうすけさん。

関西人ならではの軽快なトークで場を盛り上げる。映画の撮影ウラ話では、ウシジマくんの豪華俳優陣は皆、紗倉まなさんの事を気にしていたという事実が分かり、本人も「光栄すぎます」と喜んでいた。この時、私の中で山田孝之さんが急に近い存在に感じられた。イケメン俳優でも男は男なのだ。

 

二人ともお酒が進み、話はいつの間にか紗倉まなさんによる、やべきょうすけさんへの人生相談となっていた。

やべきょうすけさんが何やら良い事を言っていたが、

 

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私は背景の意味深な絵が気になってしまい、全然話が入ってこなかった。

 

しばしの小休止を挟み、次にゲストで呼ばれたのは阿佐ヶ谷姉妹

予想以上の会場の盛り上がりに、阿佐ヶ谷姉妹は驚いていた。

阿佐ヶ谷姉妹は絶妙のコンビネーションでベロベロに酔っ払った紗倉まなさんを叱咤し、進行を円滑に進めていた。この間にバースデーソングを会場の皆で歌い、各方面からのプレゼントが紗倉まなさんに送られた。

紗倉まなさんへの相談コーナーでは、私のアンケートが読まれることはなかった。

親友の「あんなに考えたのにな...」という発言に私は少々イラついた。私はまだラジオの件を引きずっていたのだ。何が大沢悠里のゆうゆうワイドだ。

 

しかしそんな苛立ちは、帰り際に、参加者全員にしてくれた紗倉まなさんとのハグが忘れさせてくれた。

「やさしそう」という言葉をかけていただき感無量。私はその言葉を励みに、これからも勇気を持ってビデオBOXへ行こうと思う。

 

今回生誕祭に参加してみて、AV女優として女性からも支持を得る彼女の、人気の理由がわかったような気がする。

それはまさに飾らない人柄と、アイドルのような全力のサービス精神から来ているのではないか。ニッチな経歴を生かして貪欲にチャレンジする彼女の活躍の場はますます増えるばかりだろう。

23歳になった紗倉まなさんの活躍から、これからも目が離せない。

 

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部屋とプレハブと私

 

最近気づいたことがある。

去年から住んでるアパートが、

プレハブだった。

 

都心

駅近

築5年

バス・トイレ別

2階以上

南向き

 

インターネットでこれらの検索ワードに引っかかって出てきた今の物件。

決める際は周辺の不動産屋を回ったが、条件に見合う物件はどれも私が見積もった家賃を軽く超えてしまう。家賃手当ゼロの弊社に勤めております私の絶対に負けられない戦い。やはり君に決めた。

さっそく申し込んだ内見。いざ拝見。

そしたらなんとオープンクローゼット、打ちっぱなしの壁、壁に内蔵された本棚。いわゆるデザイナーズ。即日・即決。デキる男は決断が早いのだ。

 

初めての一人暮らしに浮かれた春。

夏。南向きが災いした。

最高の陽当たり、壊れたエアコン。ショーツはボディコン。扇風機を買いに駆け込んだ深夜のドンキ。世界で一番暑い夏。もうダメかと思った。

慣れてきた生活、快適な秋。やっぱりこの家サイコーだ。

冬。寒さで目覚める早朝5時。離せないエアコン、枯れる喉。患者様のお宅にあった電気毛布を見て即日購入。毛布にボディコン。ダメだ顔が寒い。目覚める5時。

 

これはおかしい、家なのになぜこんなに寒いのだ?初めて持った疑い。

壁を叩いてみる。いい音がした。こだまでしょうか?いいえプレハブでした。

そういえば、壁に備え付けられた本棚、おしゃれだと思って見過ごしていたが、この空間は怪しい。入れ忘れられた断熱材。軽量鉄骨万歳。

これが噂のデザイナーズ・プレハブ。今年流行るかも。

 

だが、うちのプレハブ、悪いことばかりではなかった。

近頃、夜になるとテレビを消して勉学に励む時間を作っている。静寂に包まれる部屋。DSで基礎から英語の再学習。そんな時どこからか聞こえてくる、あ〜んイヤ〜ン。そういえば-ian、-ionの前はアクセントが強くなるんだっけ。これセンター必修。

Selectボタンは押しても、誤ってerectボタンは押さないよう、DSに集中、集中。

きっとお隣も英語の勉強の真っ最中なのだ。良ければご一緒に、プリーズ・テルミー。

 そんな私の悲痛な叫びは、強い雨音がかき消した。

 

築5年

駅近

バス・トイレ別

2階以上

南向き

デザイナーズ

プレハブ

これが、サービス業従事。社会人3年目の、独り暮らしの男のリアルだ。

いつかこのプレハブを思い出してきっと泣いてしまう。

だがこの不都合さもまた、特別なものなのかもしれない。

私はここで、もう少し夢を見ていたいと思う。

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春はもうすぐだ。