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ディラン好きの日記

転がる石のように

理学療法士の競合他者は?(病院編)

前回のエントリでは理学療法士という職業の専門性について書きましたが、今回も誰に、どんな価値を提供しているのか、という視点で、理学療法士の競合分野を分析してみたいと思います。

   

 

まず、理学療法士が働く場所ですが、いくつか分類できます。
 
1.病院
 ⑴急性期総合病院
 ⑵回復期リハビリテーション病院
 ⑶療養型病院
 ⑷クリニック
2.老人保健施設、デイサービス
3.訪問看護ステーション
4.行政
6.その他

 

理学療法は、病院に代表される医療保険を通して提供されるものと、老人保健施設など介護保険を通して提供されるものの2種類があります。
今回は医療保険の現場で働く理学療法士の競合他社について考えてみたいと思います。
 
 まず、就労人口が最も多い病院ですが、病院といっても種類によって、求められる役割が若干違います。
 
⑴急性期総合病院とは、
患者が救急車で最初に運ばれてくる病院で、手術直後の人など、医学的管理が最優先される病院のこと。
 
 →ここで理学療法士は、「安全に活動を手伝ってくれる」価値を患者に提供しています。
ここでは医療職である、ということが大きな価値を生んでいます。
なぜなら急性期病院では医学的管理が最優先されますから、医療職(=医学的にリスク管理ができる職業)が求められるのです。
 
そしてそーゆう人がそばで一緒に歩いてくれたり、手術後の膝を曲げてくれたりしたら安心しますよね?自分だったら恐くて曲げられないし、本当に曲げちゃっていいの?という不安があるけど、今曲げないと固まって動かなくなる膝を前にした時、患者が一番求めるのは病気のことを熟知していて、慣れている人に曲げてもらう、という安心感です。
 
また理学療法士の世界では、患者を動かす時期というものが重要視されています。
例えば脳卒中後の麻痺は発症から3ヶ月程度までが最も回復する時期と言われており、早期の神経促通が、その後の麻痺の回復レベルを左右するという定説があります。
これは各疾患によって特徴はありますが、全体としてなるべく早期にベッドから起こしリハビリを開始した方が、いい結果に繋がるという潮流が生まれています。
この点において急性期から、リハビリ専門職種の専門性へ対する期待が、以前より膨らんでいるように思います。
 
⑵回復期リハビリテーション病院とは、
急性期を過ぎた患者がさらなる回復を期待して集中的にリハビリをするための病院のこと。
 
 →ここでは患者はリハビリを求めて入院しにくるわけですから、リハビリテーション専門職としての役割は最も大きくなります。
回復期リハビリテーション病院は、自宅退院までの中継地点としても存在しており、家に帰っても困らないように家事動作や入浴などの日常生活動作に加え、仕事や趣味活動等、生きがいに関わる部分への達成が求められます。
ここで理学療法士は、「元の生活への期待」という価値を、患者及び家族に提供しています。
 
⑶療養型病院とは、
老人保健施設や老人ホームでは管理しきれない、より重度の要介護社向けの入院施設で、医師が常勤しているため医学的管理がしやすいことが特徴。
入院するためには医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者(65歳以上)という基本条件を満たす必要がある。国としてはこの種の病院は廃止し、介護老人保健施設へ転換させる方針であり、入院施設の新設が禁止されていることから倍率が高く、入院するためのハードルが高いのが現状。
 
 →ここで理学療法士が価値を提供する対象は、患者当人というよりも、患者の身内や介護者という場合が増えるかもしれません。
療養型病院へ入院する患者は多くの場合、末期のがんや重度の認知症の場合も多く、なんらかの理由のため自宅で看きれなくなってしまったケースがあります。
このような場合、患者本人、及び家族が望むのは、なるべく苦痛なく過ごせることだったり、今の機能の維持だったりして、回復を見込んでがっつりリハビリしましょう!っていうのとはちょっと違うこともあります。
したがって、ここでは「現状維持」と「苦痛の軽減」という価値を提供しているように思います。
 
⑷クリニックとは
街のお医者さんで、患者は外来で通うことで治療を受けられる。整形外科はリハビリ部門を併設してることが多い。
また、最近ではリハビリテーション専門医が開業する等、整形外科疾患だけでなく、外来で脳卒中のリハビリも受けられるリハビリ・クリニックが増えてきている。
 
 →整形外科に通う人の主訴は多くの場合、痛みです。ここで理学療法士が提供すべき価値は「症状の緩和」になるかと思います(スポーツ外来のリハビリは競技パフォーマンスの向上も加わります)。
普通に生活している人はいくら膝が変形してきていても、痛みがなければ医者に通ったりしません。
痛みも、ほんとうに耐えられない程度になって初めて医者にかかる人も多いようです。ほとんどのクリニックは手術室を持ち合わせていませんので、医師による投薬と、理学療法士によるリハビリが治療の主体となり、それでもよくならなければ手術が出来る病院を紹介されます。
この、次の受け皿が存在するという性格上、クリニックに勤める理学療法士間の技術格差は大きいようで、細かく原因を評価し、治療を行う理学療法士がいる一方で、電気を当てて、マッサージをして終了!という理学療法士である必要の無い治療が行われている現状もあるようです。
 
以上のように、病院の性格に応じて需要と供給価値が異なることを示しましたが、上に挙げた価値は常に理学療法士が持ち合わせる必要があるもので、場所によって占める割合が変わるというだけの話です。
 
あと注意してほしいのは、私自身が身を置いていたのは急性期の総合病院であり、現在は訪問看護ステーションで働き始めたばかりです。
なのでその他の病院に関してはどうしてもイメージに頼ってしまっていますので、実情はまた違っているかもしれません。。これは各種病院に勤めている理学療法士の意見も伺いたいところです。
 
 
理学療法士の競合他者は?
 
 急性期総合病院 →「安全に活動を手伝ってくれる」価値
回復期リハビリ病院→「元の生活への期待」という価値
    療養型病院→「現状維持」と「苦痛の軽減」という価値
クリニック、開業医→「症状の緩和」という価値
 
急性期総合病院
まず、急性期において最も競合となるのは看護師でしょう。 
医学的管理という面では、理学療法士よりも看護師が優れているからです。
学校で学ぶ基礎医学は、看護師は内蔵系を、理学療法士は筋・骨格系を深く掘り下げますが、基本的なところは同じようにカバーしています。
仮に、筋・骨格系の知識が豊富で運動連鎖などの運動学を独自に学び、様々な神経促通手技を身につけたスーパー看護師がいたなら、リハビリを行うのは、理学療法士じゃなく看護師でもOKなのです。
 

 しかし現状は、看護師にそのような時間はありません。

 看護師にこのような物理的制約が生まれたことで、看護業務とリハビリテーションが切り離され、リハビリ専門職が生まれたとも言えるのです。

 
次に競合として挙がるのは、ケアワーカー(介護福祉士)です。
それは患者の活動を手伝うマンパワーとして大きな存在だからです。
仮に、理学療法士が治療という視点を捨てて「歩くのを介助する」場合、ケアワーカーも同じ仕事をこなせます。ただ歩くことを目的としたなら、理学療法士の仕事はケアワーカーに置き換わるでしょう。
実際にはケアワーカーは、看護師と二人三脚で入院生活業務を担っており、患者の活動に付き添う十分な時間はなさそうです。
 
回復期リハビリテーション病院ではどうでしょうか。
ここでは元の生活への期待という価値を提供していると書きましたが、この時期では自分の抱えた障害を医者に治してもらうことはできません。
自分自身が持つ可能性にかけるしかないのです。
したがって自分の可能性を最大限に引き出してくれる人が求められ、これはリハビリ専門職の大切な仕事です。
 
 最も競合となるのはやはり、同じリハビリ専門職である作業療法士でしょう。
 作業療法士は”作業”を通してリハビリテーションを展開しますが、その作業の選択に当たっては”その人”というものを深く理解する必要があります。
この点において作業療法士は生活背景、社会心理的側面を含め、豊富な評価手段を持っています。元の生活への期待をどのように叶えるのかという目標設定に置いて、この点は理学療法士も着目しなければならないところだと思います。
 
今まではリハビリテーションと言えば理学療法士という印象が強かったと思いますが、高齢化に伴う独居世帯の増加を受けて、政府としても高齢者の”生きがい”の創造が重要だと思い始めています。
ここで作業療法士が専門性をうまくアピールできれば、地域社会でのニーズは増すでしょうし、逆に理学療法士がその専門性を怠っていれば、今までリハビリ業界を先導していた理学療法士という立場は作業療法士に置き換わることも充分考えられるのです。
 
療養型病院
個人的に1番危惧するのはここでの専門性においてです。
「現状維持」と「苦痛の軽減」リハビリテーションが主眼とする自立支援とは異なるからです。苦痛軽減の手段としては薬が考えられますが、苦痛は器質的な痛み以外にも、生活に対する苦痛というのがあるはずで、その緩和にあたっては、より全人的にその人をみる必要があります。
ここでは専門性云々より、如何に相手の立場に立てるかという人間性みたいなものが必要な気がします。
ただ一つニーズとして大きいと思うのは、医療職としてちょっとした異変に気づいたり、リスク管理が出来る点だと思います。
ここでの競合他者は、医療従事者と患者の家族としておきます。
 
クリニック
 クリニックは入院とは異なりますので、その競合はより広がります。
入院していれば、外に出られないので、競合はその病院内だけですが、家に帰れば近所にはいろんな症状の緩和手段があります。
例えば東洋医学系の開業医院(接骨院、ほねつぎ、整体、鍼灸など)
最近では駅近にマッサージ店とかストレッチ専門店とか目立ちますよね?(30分2000円くらいの)こーゆうのも症状緩和手段として顧客に選ばれてるから拡大してきているのでしょう。
 
近所の人からの口コミとかもあなどれません。自分はこのサプリメント飲んだら治った!とか、近所のカーブス良かったわよ、一緒に通いましょうよ!とかね。
年輩の人でも若い人でも口コミ情報は重要視されます。そう考えるとジムのインストラクターとかも競合他者になりますね。
あとはあれですね、メディアが与える情報。
テレビで著名なお医者さん言ってた情報とか、雑誌とかネットで見つけた情報が人々に与える影響は計り知れないです。
ネット上の情報量は積み重なってどんどん豊富になっているし、個別の悩みを医師が答えてくれる知恵袋みたいなのも存在してます。これらは全部、競合他者となりえます。
 
このようにインターネットの普及によって、人は情報を重視するようになりました。
昔のように、『痛くなったらすぐ病院へ』の時代は終わり、これからは各個人が、あるいは家族がその症状を検索し、ある程度自分の病気のことを知った上でどこへ行こうか判断するようになります。
もしかしたら、ネット上の情報だけを頼りに自分で対処し、医療機関にかからなくても治っちゃったってことも増えるのではないでしょうか。
 
情報の取捨選択に戸惑う消費者は出るものの、個人的には、このような流れは良いことだと思います。
なんでもかんでもまず病院!という発想より、まず自分で考えて判断してみる方が、自己管理力が高まります。医療費支出面でもコストを抑えられますしね。
これからは自分の健康は自分で管理する、セルフケアの時代になっていきます。
病院は、セルフケアが行き詰まったときのセーフティネットとして役割を果たせれば良いのです。その受け皿の種類は、上で挙げただけでも、本当に豊富です。
 その受け皿のひとつとして、理学療法士は専門性を発揮しなければならないのでしょう。理学療法士ができることって患者にとって大きな利益になり得ると思いますから。
 
情報社会という点からも、市場に選ばれるために必要なことは何なのか、みなさんはどう思いますか?
 
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