ディラン好きの日記

転がる石のように

介護保険サービスで理学療法士が提供する価値って?

以前、病院における理学療法士の競合他者について考えてみましたが、今回は、介護保険領域での競合他社を考えてみたいと思います。その前に、本エントリでは介護保険領域において、理学療法士がサービス利用者に提供している価値をまとめておきたいと思います。

 

1.病院
 ⑴急性期総合病院
 ⑵回復期リハビリテーション病院
 ⑶療養型病院
 ⑷クリニック
2.老人保健施設、デイサービス
3.訪問看護ステーション
4.行政
6.その他
 

介護保険によるサービスは介護保険法上、要支援、或いは要介護認定を受けた者が利用できるサービスとなります。

老人保健施設とは、

病状が安定していて入院の必要のない、要介護1〜5の認定を受けている者が、利用できるサービス。

病院から在宅の中間地点としての位置づけで、在宅復帰を役割としています。そのため入所期間は3ヶ月という決まりがあり、それを超える場合、継続する必要性があるかどうかが審議されます。

 

一方、デイサービスは、日中利用者を預かってくれる場所で、幼稚園や保育園の高齢者版と考えるとわかりやすいです。

そこでは食事や入浴、排泄などの介助はもちろん、集団体操や、遠足などのアクティビティも企画され、利用者同士のコミュニケーションの場としても重要な役割が期待されます。

また、これらは介護者にとって、その一時介護から解放され、外出したり、息抜きをする時間を確保できるため非常に助かります。(介護者が数日間、家を空けなければならなかったり、介護ストレスが深刻な場合、ショートステイという30日以内に限り利用者を預かってもらえる制度もある)

 

→ここで理学療法士が提供する価値は、利用者の日常生活動作能力の予後予測をすることだと思います。

在宅へ復帰させることを目標とする以上、現状の日常生活動作能力を評価することはもちろん、どれぐらいで、どこまでのことができるようになるのか?というのは、利用者も家族も最も気になるところです。

自宅トイレからの立ち上がりは3ヶ月後には安全にできるようになり、便座の高さを上げれば1ヶ月後には可能、とわかれば、それを見越した家の環境調整を家族はできるようになります。段差をなくすためのスロープの取り付けや手すりの位置なども、理学療法士が相談を受けることは多いんです。このように家に帰るにあたっての相談役としての役割は大きいと思います。

 

訪問看護ステーション※1

理学療法士訪問看護ステーションと言われる事業所から、契約している各家庭に派遣され、リハビリを行います。

ここでリハビリは利用者の自宅が提供場所となるところに特徴があります。

どーゆう人が利用するのかというと、一つには利用者が”寝たきり”状態の場合。

高齢のための筋力低下により起き上がれなくなった人もいれば、進行性の難病の人など、”寝たきり”になった経緯は様々です。そのような状態でも自宅療養を望む場合、自宅療養の継続を可能にするために訪問リハビリが選ばれます。

他方では、一人暮らしをしているくらい動けているけど、なにかあったら心配だと周囲が判断した場合、病気や転倒の”予防”を期待して訪問リハビリが選択される場合も多いです。

 

これは実際に訪問看護ステーションで働いてみて感じたことですが、意外と元気な利用者が多いのに驚きました。以前まで私は、訪問リハビリを利用する人は家から出られない、つまり老人保健施設やデイサービスに通えない人が使うサービスだと思っていたからです。

 

訪問リハビリが”割と動ける人”にも選択される理由は他にも、その”個別性”にあると思います。

病院では基本的に、患者は一対一で理学療法士理学療法を提供してもらえます。しかし、介護保険サービスになると多くは一対一で付きっきり、というわけにはいきません。

老人保健施設では利用者の数に対し、圧倒的に理学療法士マンパワーが不足しています。このような環境もあり、一対一で付けたとしても一単位(20分)しか個別でリハビリを実施できないことが多いそうです。

デイサービスは集団でのアクティビティがリハビリの位置づけであり、個別性はほとんど無いと言ってもいいでしょう。

 そのような中で、訪問リハビリは40分〜60分の間、個別でリハビリを行ってもらえるという点で、介護保険サービスの中では最も”個別性”の高いリハビリサービスなのです。また、他人との交流を図りたがらない利用者にとっても、自宅でできるという”空間としての個別性”が、選ばれやすい理由となっています。

 

→訪問リハビリにおいての理学療法士の提供価値は、大きく2つに分かれます。

一つは、自宅生活の安全警備保障です。ALSOKの健康版と言ってもいいかもしれません。週1,2回訪問して実際に対面しながら、バイタル(熱、血圧、脈拍、酸素飽和度など)をとってもらえるだけでも、家族としてはかなり安心です。

多くの場合、訪問するのは理学療法士作業療法士のようなリハビリスタッフの他に、医師、看護師、ケアマネージャー、ヘルパーなどがおり、それぞれ曜日毎に訪問日が決められています。

そしてそれぞれが得た情報は、ケアマネージャーを中心として、家族にも共有されます。したがってこの価値は、理学療法士専売のものではありませんが、病院から離れた在宅においては、専門性よりもニーズの高いことなのです。

 

2つめは、外界とのつながりを支援することです。

家の中の生活に安心できたら、今度はまた家の外に出て、社会とつながる。これが人間の生活の自然なありようだと思います。

”参加したい”という人間が本来持っている欲求をいかに引き出せるか、というのが力の見せ所になります。

しかしそのためには、利用者や家族との信頼関係を築けていなければなりませんし、人のインセンティブシステムに働きかけるような、声のかけ方や、課題提示の仕方を工夫しなければならず、なかなか難しい作業です。

 

まとめると、介護保険サービスにおいて理学療法士として提供している価値は

理学療法士の提供価値

老人保健施設日常生活動作能力の予後予測

 訪問リハビリ→ 自宅生活の安全警備保障、外界とのつながりを支援

  こうなるのではないでしょうか。

かなり色々なことを端折っていると思われるかもしれませんが、突き詰めればこういうことを求められているんじゃないかと感じています。

 次回は競合分野について書きます。

 

 <関連エントリ>

理学療法士が思う、理学療法士のすごいところ - ディラン好きの日記

理学療法士の競合他者は?(病院編) - ディラン好きの日記

 

※1病院が訪問看護ステーションを持つ場合、医療保険として訪問リハビリが行われる場合もあります。