ディラン好きの日記

転がる石のように

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 今日はNYのホットスポットに行ったときの感想です。

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ある日、街角のスタバでコーヒーを飲みながら『地球の歩き方』を眺めていると、

遠くから見覚えのある男が近づいてきた。

 

それは大学の友人S

ニューヨークで運命の再会であった。

 

私はこれを好機と捉えた。

そう、一人だからと諦めていたSEXミュージアムに行けると思ったからだ。

私の提案に友人Sも「俺も行きたいと思っていた」と即答した。

持つべきはスケベな友である。

 昔から、アメリカは性に対してオープンな国だと言われる。私達はそんなフロンティア・スピリットを学びに来たのだ。

 

『地球の歩き方』を頼りに探すと、目的地はあの5番街の近くに堂々とあった。

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 中に入ってみると、入場料が17ドルくらいしたので、

「高いな…やめようか」という雰囲気になったが、

「この中には、きっとドエロいものが詰まってるぞ」という友人の予感を信じ、入場料を払った。持つべきは、スケベな友である。

 

入口にはお土産コーナーがあって、写真集がずらーっとディスプレイされている。

私はそのうちの一つを手にとりページをめくった。

一発目の写真が「男性器をパンに挟んだ写真」であることを確認すると、私は静かに項を閉じた。

とんでもないところに来てしまった。

しかし今更引き返すこともできない。当時の自分にとって、17ドルはそれほどまでに大きかったのだ。後悔先に勃たず。

辺りを見回すと、男二人で来ている客など一組もいなかった。

きっと僕らはゲイだと思われただろう。

「それはアメリカのお家芸だぜ」

 友人はうまいことを言ったが、私はそれどころではなかった。

 

ミュージアム内は、「セクシャル・アート作品の展示」「性文化の歴史」「性の多様性」みたいな感じに分かれていたと思う。

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 展示の前で仁王立ちする友人S

 

最初のうちはこれら性を描写したモニュメントを「ほお〜」「ひょえ〜」と眺めていたが、

次第にコーナーは「ゲイ」「レズビアン」「SM」「ハードコア」とディープになっていった。それらは、チェリーで空も飛べていない私達にとってはあまりに過激だった。

 

ゲイのコーナーに差しかかった時。

壁一面の、アメリカ人男性の強靭なハネモノ写真の展示を前に、私達は圧倒され、言葉をなくした。それは完全にスカーレットだった。

これほどまでの屈辱、敗北感は過去にないだろう。

 「大きさは大事じゃない」

負け惜しみで放ったひと言は、

このスター「ゲイ」ザーを前に、儚くも散っていった。

 

散々グロテスクなものを見させられた挙げ句、

最後のコーナーが「動物の交尾」だったとき、私達の絶望は頂点に達した。

“ これは正夢…?”

これが思い出になる前に、私達はミュージアムを後にすることにした。

 

 

私達が求めたものはここにはなかったのだ。

私達が求めていたエロは、もっとポップで純粋なものだった。

そんな少年のこころを、マンハッタンという巨大な街はアートを盾にしたグロテスクさで踏みにじったのだ。

とても許せることではない。

しかし、ただこのミュージアムを批判することはできない。

これが性欲を喚起させる展示であったなら、公然わいせつ物となってしまっただろう。

このような修正を施さない性的な展示が許されるのは、それが“芸術”として見なされるからであって、芸術かワイセツかの線引きは、性欲を喚起させるかどうかが一つのカギとなる。

その意味で性欲を喚起されることがなかった分、これは立派なアートだったのかもしれない。

このアートの価値に気付けなかった私の感性が足りない、ということなのだろうか。後悔先に勃たず。

だけど、これだけは言わせてほしい。

どうか、エロとグロテスクを結びつけないでほしい。

エロはどこまでもポップであってほしい。

エロは笑えるものであってほしい。

エロはヨロコビであって、カナシミであって欲しくはない。

日本のトゥナイト2ぐらいがちょうど良いのだ。

 

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いずれにせよ、よこしまな気持ちで行くSEXミュージアムはおすすめできない。

私達には秘宝館の方が合っているのかもしれなかった。

 

 しかし男ふたりで行って後悔したSEXミュージアムなのだけれども、女性と来なくて本当によかったと思う。

カップルや老夫婦で来ている欧米人の姿を多く見かけたのだけれど、

彼らはどうゆう感覚なのだろうか。

 

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 帰りにパンに挟まったソーセージを食べながら、私はそんなことを考えていた。

それは あつい暑い夏の日の、昼下がりのことだった。

(つづく)