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ディラン好きの日記

転がる石のように

勉強会に参加したら悪徳セミナーだった

雑感 医療・福祉

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先日、職場の先輩とふたりで勉強会に参加した。

ウェブサイトで見つけたその勉強会は13800円と少々割高だったが、私の専門分野の勉強会ではよくあることだ。

内容は呼吸リハビリテーションについて。朝から夕方まで。それだけのボリュームならなおさらこの値段も納得である。むしろ安い方かもしれない。

 

不安があったとすれば、講師の名前が公表されていなかったことくらいだ。

たいした問題ではない。だって、「○○リハビリテーション研究会」というお固い名前の組織が主催しているのだから。その組織の名前は聞いたこともなかったけど、誠にそれらしい名前なのだからきっと信頼できる。

 

会場を開けると30人くらいの受講生が席に座っていた。大々的な広告の割には少ないな、と思った。休日に13800円を払い、わざわざ勉強しようという輩はこうも少ないのか。不勉強な人達を他所に私達は今まさに、価値ある講義を受けようとしている。ワクワクしながら講師が来るのを待った。

 

しばらくすると、髪を外ハネさせた若い男が登壇した。年齢は30代中半くらいか。

(ああアナウンスの人か…さあ、誰が呼ばれるのだろう?)

 

 外ハネ30代男がしゃべりだした。

「はい、では講義を始めます!」

 

(…え?)

 

「えー○○と言います。私は3年間この近くの総合病院で働いてまして、そこはもう高齢者ばっかだったんですよ、ほとんどの高齢者ってあれじゃないですか…呼吸器の疾患を合併しているわけなんですよ。そんなわけで、私のところは呼吸リハビリを専門にやってなかったんですけども、一から自分で勉強したんですね。」

(…うそ?)

「それからすぐ退職して、ヨガと整体のインストラクターの資格をとったのち、自分でこの会社を立ち上げたんです。主にヨガスタジオと、こういうセミナーを運営してます」

(…まじ?)

「まあ自己紹介はこれくらいにして、講義を始めます。」

 

 あたりが少々ざわつく。

そして、どこの馬の骨かもわからない。臨床経験3年の男の講義が粛々とはじまった。

 

 さすが若くして会社を興したやり手なだけある。

自然な流れからのタメ口、上から目線のダブル攻撃で私達を威圧してくる。

横目でチラッと席を見渡したら50代くらいのベテランっぽい人が受講していた。

あの方はどんな気持ちで聞いていたのだろうか。主催者に代わり、私がこのセミナーのアンケートをとりたくなった。

 

ともあれ会社を興した人間はすごい。

臨床経験3年というハンディキャップをもろともせず、ほとんど全員が自分より経験年数が上であろう専門職の前で、堂々とプレゼンできるのだから。羨ましくて会社を起こしたくなる。

すごいのはそれだけではない。

外からは触れるはずのない骨、触れるはずのない筋肉の触り方まで教えてくれるのだから、もうサイコーだ。明日からすぐ使える!

解剖学の教科書にも、学校の授業でも教わった触れるはずのない骨。その常識を超えてきた臨床3年目。勘弁して。

 

 

昼休みをはさみ、午後からは講師が変わるらしい。これは期待。

午後から登壇した講師は、30代半ばの短髪の男で、最初からタメ口全開だった。

(やった!グレードアップだ!!)

「えー、私は最初整形外科で2年勤めてて、まあ整形外科なんで呼吸器の人はあまりいないんだけど、スポーツのパフォーマンスに呼吸って大事ですよね?そこで興味持って勉強したんですー、なんやかんやで会社興しましたー」

 

午後の講義は触診がメインだったのだが、被験者として前に呼ばれた人が、

「きみ、腹斜筋が弱いねー、もっとここ、しぼらなきゃ」

と公衆の面前で体型をディスられて帰ってくるのを見て、私達はビクビクしていた。

被験者として協力したのに恥をさらされた彼にも、後でアンケート用紙を渡そう。

 

私は運良く被験者に選ばれることはなかったのだけど、講師が各テーブルを巡回している時に捕まり、両腕を頭の後ろで組まされて、後ろから体を持ち上げられて揺らされた。頼んでもないが、私の胸椎を柔らかくしてくれたらしい。感謝感激雨あらし

おかげで身体が軽くなった感じで、今にも会社を興せそうだ。

 

講義が終盤に近づくにつれて、私は頭の中で勘定をしてしまった。

一人13800円で、それが30人、会場代を差し引いても…

これはなかなか良い商売かもしれない。

彼らの懐に消えた私の13800円。これをだまされたというのは簡単だ。

だがモノは考えよう。彼らの運営するヨガスタジオに寄付したと考えよう。若い女性がヨガに興じる場所への投資、それならば悪い気はしない。代わりにホットヨガの1講座を私に持たせてくれないだろうか。

 

 

次回から私は、1に講師、2に講師、3に講師を肝に銘じておこうと思う。講師が何者なのか明記されていない講習会は大概あやしいことがわかった。

そして私の知る限り、大物の先生ほど言葉遣いが丁寧であるという定説は、いまだ破られていないのであった。