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ディラン好きの日記

転がる石のように

私は社長を擁護したいと思う

雑感

 

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社長が苦境に立たされている。

うつむき、肩をすぼめ、少し内股で歩くその姿は、以前のような覇気を失ってしまっている。最近、職場ではまるで存在感がない。

 

 何が社長をそうさせたのか。

きっかけは、親会社の役員が当事業所へヒアリングに来た時の事である。

親会社では現在、新規開拓事業として独居高齢者向けの宅配弁当を開発中だそうで、そのため、実際にお宅に訪問している私たちに現場のニーズを聞きに来たというのだ。しかもこの日は、親会社の副社長直々にやってきたのだから、彼らの本気度は相当なものだっただろう。それと反比例するように、しぶしぶ業務後に集う我らが専門職。

実は事前に管理者に呼び出された私たちは、今日の事を知らされていた。

何やら本社でよくない動きがあるので、あまり賛同するような意見を述べないように、また社長の挙動に今後注意するように。とのことだった。

 

ヒアリングが始まった。

親会社副社長からの質問に対し、腕を組みガードを固める専門職一同。

お弁当事業については

「味の好みは人によって違う」「週替わりだとしても飽きてしまう」「そもそも自宅じゃなくてデイサービスで食べる方がベター」といったネガティブキャンペーンの応酬の末、最後に管理者から「もし弁当が開発されても、それを売りつけるようなことはしたくありません。」という言葉でとどめが刺された。

発言自体に関しては、一部的を得ている部分もあったので良いとしても、専門職の態度には問題があった。腕を組み、顎をしゃくり、副社長の話を聞く彼女らは、私から見てもあまりにふてぶてしく、失礼に思えた。

時に専門職というのは、その専門性の高さ故か、一般的な礼節というものをわきまえない者がいる。特に”経営”というものには無頓着な傾向があり、”現場で働く自分たちの業務量がこれ以上増えないこと”が最優先なのだ。

 

すかさず社長がフォローに入ろうとする。

社長は親会社からの出向で当事業所に来ており、この状況はかなりマズかった。

しかし専門職の団結は強く、ヒアリングは弁当事業に対する肯定的な意見がなにひとつ出されないまま終了となった。

 

それから管理者の予想通り、我らが社長のプロモーション活動が始まった。

社長が親会社からの圧力を受けたことは言うまでもない。

まず、社長はどこからか「栄養」に関する勉強会を見つけてきた。これは回覧が回ってきたが、参加者ゼロ。

次に社長が行なったのは、在宅栄養管理のプロを取り上げたNHKの番組〜プロフェッショナル〜の宣伝。放送後には自らそれをDVDに焼き、2枚をデスクに置いて私たちに見るよう促した。社長の狙いとしては、私たちに栄養学への関心を高め、そこから何とか弁当事業への協力に繋げたかったのだろう。

しかし社長は肝心な時に詰めが甘い。DVD2枚のうちの一枚にプリキュアが録画されていたことが、DVDを見た看護師によって明らかになり、社長はそのイージーミスにより改めて自分の首を絞めることになった。社長の名誉のために言っておくと、プリキュアは社長の娘がすり替えたものらしい。

 

そんなこんなで社長は、親会社と専門職の間で板挟みにあい、苦境にさらされている。

ある時喫煙所に、思い悩んだ様子でタバコをくわえる社長が居たので、思わず声を掛けた。

「厳しいよ。きびちい。」

珍しく弱音を吐いていた。若輩者の私には、それ以上踏み込んだ質問はできず、「ご事情、お察しいたします。」と答えることしかできなかった。

 

その後、社長には外回りの仕事が増えた。

そして外回りや会議に出席した後は、決まって直帰するようになったのである。

なるべく会社に居たくないのだろう。

そう思っていたのだが、どうやら理由はそれだけではなさそうなのである。

数日前、社長のデスク周りを掃除していた事務の方が、ゴミ箱からピンク色のアヤしい会社名と源氏名が記された名刺を見つけてしまったのである。これを見つけたのが私であれば、それこそ”ご事情をお察し”し、何も言わずシュレッターにかけるのだが、その事務の方は管理者にそれを提出してしまったのである。

今事業所ではその話題で持ちきりだ。

それに追い打ちをかけるように、そういえばこの前の会議は珍しく錦糸町だった、とか様々な疑惑が浮上している。

結論として、社長は直帰の時は妖しい店に立ち寄っているという話になった。

 

だが、この話を聞いていて私は、社長の気持ちも察せざるを得なかった。

親会社からの圧力と、従業員からの反対の間で板挟みにあっている現状は、社長にとってどれほどのストレスだろうか。そのストレスがもしも錦糸町で癒され、明日への活力になるのであれば、わざわざ直帰してまでデイタイム割引を使う意義はある。

皆が業務に取り組む中、直帰する社長のこのような行動は、明らかに”違法ではないが不適切”だろう。

しかし、私は社長の心労を考えると、もっと寛容になっても良いじゃないかと思っている。それは普段、あらゆることに寛容に対処してくれる社長への恩返しとして、私たちはその受けた恩恵を忘れてはならないと思うからだ。

 

このように社長擁護派の私だが、一つだけ社長に対して言わせて頂きたいことがある。

それは昨日社長が午後出勤をしたことに対してだ。

 

もしもデイタイム割に飽き足らず、早朝割にまで手を出したのなら、私は言いたい。

「社長、いくらなんでもセコすぎます。」と。

 そこは若手にもっと夢を見せて欲しいと思うのだ。

 

公私混同。いや、公私に渡り、己のコン棒を振るい続けた社長は、

次の定例会で今度は管理者から厳しいヒアリングを受けるだろう。

これは社長の反撃のチャンスだと思っている。ピンチではなくチャンス。

社長には是非、腕を組み、顎をしゃくり、管理者の追求にこう答えていただきたい。

「味の好みは人によって違う」「週替わりだとしても飽きてしまう」「そもそも自宅じゃなくてデイサービスで食べる方がベター」